2010年5月10日月曜日

液晶テレビの「表示の遅延」と「応答速度」

どうも、液晶テレビの「表示の遅延」と「応答速度」がごっちゃになってる人が多いみたい。
ゲーマーに朗報、世界で初めて「1ms」の応答速度を実現した液晶ディスプレイが登場
こちらは応答速度が1ms、表示の遅延については書かれていない。

REGZA Z9000の「新・ゲームモード」はこうして生まれた
ちょっと前に話題になっていたREGZAの新ゲームモード。こっちは「表示の遅延」が約18.2ms

こうやって数字だけ並べると桁違いに前者の方がよさそうに見えるけどそう単純な話じゃない

ゲームの遅延の種類

ゲームにおける遅延には実はいろいろある。プレイヤーがパッドのボタンを押してから、それが画面に反映されるまでにどれだけの遅延要素があるか、知ってる範囲で書いていこう

入力レイテンシ

もはやテレビ以前の問題になってしまうが、ゲームシステム内ですでに入力に対する遅延が出てしまっている。ここは「ユーザーがボタンを押した瞬間」から「ゲーム機の映像出力信号に反映されるまで」の遅延。
例えば60fpsのゲームで入力してすぐにゲームに反映される場合、ボタンを押してからコマンドがゲーム機のプログラムに解釈され、3D映像をレンダリングして映像信号に置き換わるまでに1/60秒かかることになる。この時点ですでに16.7msほどの遅延が出てる。さらに細かい話をすればボタン入力を受け付けるタイミングが16.7ms間隔になるので、ボタン入力受付終了直後にボタンを押した最悪場合33.3msの入力遅延が発生する。
確率で平均化すると、だいたい25msの遅延になる。
これが最近主流の30fpsのゲームになるとさらに遅くなる。入力受付タイミング自体が33.3msになるので最大遅延が66.7ms。平均化すると50msの遅延。入力のシビアなゲームについては入力受付間隔だけを細かくしているものもあるのでフレームレートから単純に遅延を計算できないが、大体これぐらいの遅延がすでにゲーム機内で存在している。

もっとややこしい話をすると、トリプルバッファリングとかドライバやAPIでのコントローラ入力の遅延もあったりするけど、あまりに脱線しすぎるのでこのへんで・・・

液晶テレビの表示の遅延

さて、ようやく本題の表示の遅延の問題。
最近の液晶テレビは映像を綺麗に見せるために、入力された信号をテレビ内部にためて数フレーム分のデータを見て映像を補間したり(ソニーのエンハンスドモーション機能とか?)、拡大したり(入力信号の解像度が低い場合にドットが目立たないように補間する処理が入る)、応答速度を上げるために事前計算したり(2枚の輝度の差から各ドットへかける電圧を調整して応答速度を上げるとか?)なにしろいろんなことをしている。
こういう処理をするために、液晶テレビ内部に数フレームデータをためてから実際の映像を出力しているケースがほとんどだ。
特に、テレビメーカーは綺麗な映像が出た方がやっぱり見た目がよくなるので「計算された綺麗な映像」>「遅延の少ない汚い映像」となってしまってデフォルトのモードが遅延の少ない、いわゆるゲームモードになってないことが多い。
デフォルトのモードだと、現在の液晶テレビはだいたい4~5フレームの遅延(66.7ms~83.3ms)ぐらいの遅延が存在している。

応答速度

最後にようやく応答速度の話。
これは、表示の遅延のあとに、じゃぁ実際に液晶のドットをその色にしてください。って信号を出した時に真っ黒のドットが真っ白なドットに切り替わるまでの時間をあらわすもの。
これが大体4ms~8msぐらい。
これは何に影響するかっていうと、白黒のメッシュでできたアイテムが(いまどきそんなものは珍しいが)1ドットずつスクロールしたときにちゃんとメッシュに見えるか、残像を残してグレーっぽく見えるか。そのあたりが変わってくる。ようは色が切り替わってる状態がどれぐらい見えてしまうか。16.7msで1フレームなので8msかけて色が変わっていると表示されている時間の半分は前のフレームとの中間色が表示されてることになるので残像が結構ひどいのかな?でも8msってのは真っ白から真っ黒とかのワーストケースなんで普段はそんなに気にならないのかも。宇宙空間の真っ黒背景に白い弾が飛んでいくときとかにそういう感じになるのかも。

まとめ

さて、今までの遅延を全部足すとどれぐらいになるか?
30fpsのゲーム機で50ms + 液晶テレビの表示の遅延で 70ms + 液晶の応答速度で8ms = 128ms(8フレーム)
ボタンを押してから8フレーム遅延、これはなかなかひどい。
これぐらいひどいとマリオはジャンプし損ねて敵に突っ込み、テトリス棒を1ラインずれて落としてしまったり。Wiiコントローラのポインティングに違和感を感じたり・・・ゲームをする上では結構致命的。
だけど、自分の家の環境しか知らないとそんなもんかなーって思ってしまうかも。そのぐらいの遅延。


さて、私が使ってるモニターの後継機、三菱のMDT243WGIIだとどれぐらいか?
30fpsのゲーム機で50ms + 液晶テレビの表示の遅延で 33ms(多めに見積もって2フレーム) + 液晶の応答速度で6ms = 79ms(5フレーム)



記事にもなってたREGZAのZ9000だと
30fpsのゲーム機で50ms + 液晶テレビの表示の遅延で 18.2ms + 液晶の応答速度で6ms(不明これぐらい?) = 74.2ms(4.5フレーム)

ゲームモードにすると、だいたい5フレーム遅延。これはゲーム側の遅延も含んでるので、よく書かれてる液晶テレビのスペック表だと-3フレームしたぐらいの遅延になるので
ゲームモードで2フレーム遅延。通常だと5フレーム遅延ぐらいの感じだと思う。
結構、この差はデカイです。自宅でゲームやってて液晶テレビの人は説明書ひっくり返して「ゲームモード」とか「スルーモード」みたいなのがついてないか調べた方がいいですよ~
結構メニューの奥の方に隠れてたりするので簡単には見つからないかもしれないけど、最近のならだいたいついてます。

HDMIの信号規格にゲームモード信号とか追加してくれないかなぁ。その信号を見てテレビがゲームモード優先に切り替えたりとかしてくれるとこういう問題が起きにくいと思うんだけど・・・
HDな映像ソースっでゲームの占める割合って結構あるとおもうんだよね。なので規格としてそういうのがあってもいいんじゃないかなーと思ったりしちゃうわけですが・・・
そうすれば、PS3でゲームしている時とBluRay見てる時で自動的にモード切り替えとかもできそうだしいいと思うんだけどなぁ

6 件のコメント:

  1. これは私も記事読んですぐごっちゃになってるなぁと思った。
    遅延と帯域も良くごっちゃになってるよね‥。

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  2. 遅延と帯域だとちょっと前にあった事業仕分けの「光よりはやい通信」ってやつだね
    わかった上でバカにしてる人とノリで光より速いものなんかネーヨ的な感じで批判してる人が入り交じっててちょっと面白かったw

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  3. 光ルーターの話か。「光よりはやい通信」は字面見たときに、量子もつれの話かと一瞬wktkした元全光ネットワーク研究者(大学院)でした(ぉ
    しかしあれもまたひどい内容だった‥。

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  4. なるほど わからん
    2016年現在でもこの話は当てはまるんですかね

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  5. フレームの画面更新の周期で入力を取得しているとは限らない
    家庭用のゲームならおよそ10倍ほど細かい周期で入力を更新している場合が通例

    このエントリーの入力レイテンシの説明は、昔の2Dグラフィックな業務用ビデオゲームならば当て嵌るのかもしれない

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  6. 入力レイテンシについては画面更新とは別に細かく取得している件についても言及していますが
    私の知る限りでは家庭用ゲームで入力をそこまで細かく取得しているものは知らないです。

    コマンド入力式の格闘ゲームではあるのかもしれませんが、一般的な家庭用ゲームであればアクションゲームであっても画面更新と入力取得は基本は同じかと思います。

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